
2025年度全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦・第2戦が3月7日(金)~9日(日)にかけて三重県の鈴鹿サーキットで開催された。
ThreeBond Racingは今シーズンに向け、体制を一新し、監督には昨年までチームのアドバイザーを務めた塚越広大氏を昇格。
トラックエンジニアには一瀬俊浩氏を新たに迎えドライバーには昨年から引き続き三宅淳詞選手を起用して開幕を迎えた。
開幕前から新体制での活動は既に始まっており、2月の鈴鹿テストでは降雪により2日間の予定が1日に短縮されたものの、三宅選手は出走22台中3番手のタイムを記録して注目を浴びた。

鈴鹿サーキットの上空には薄い雲が広がり、気温8℃、路温 11℃と冷え込んだ。
午前9時50分、ノックアウト方式の予選が始まり、チームは前日のセッティングを見直した上で、三宅選手をコースに送り込んだ。
車両の操縦性は前日よりも改善され、三宅選手は手応えを覚えながらタイムアタックにとりかかった。
しかし、コースの一部では速さを見せるも1周をまとめきれず、タイムは思い通りに伸びないまま1分38秒914に終わった。
この時点で三宅選手はQ1グループAの出走11台中5番手につけていたが、その後このタイムを上回る選手がおり、最終的な順位は8番手。
6番手までが進出できるQ2への出走はならず Q1グループBとQ2の結果を受けて、スターティンググリッドは16番手と決まった。

14時45分、曇り空ながら気温13℃、路温21℃と公式予選時よりも良いコースコンディションで決勝レースがスタートした。
まずまずの加速をした三宅選手はポジションを守り1コーナーへ進入したが、後方アウト側から大嶋和也選手が並びかかる。
三宅選手は前方を走る山下健太選手を追いかけながら、大嶋選手をS字コーナーで抑え、山下選手の背後についてNIPPOコーナーヘ向かった。
スターティンググリッドが後方だった三宅選手はスタート合図までの停止時間が短く、その分タイヤが冷えずにグリップを発揮したことで優位にあった。
実際、NIPPOコーナーに向けた加速は良く、三宅選手はNIPPOコーナーアウト側から山下選手に並べると判断、加速を続けた。
しかしながら、僅かにコーナーアウト側にタイヤがはみ出したことで車両はコントロールを失い、スピン状態となって外側のタイヤバリアに突っ込み、車両後部を破損。
走行不能となってしまい、オープニングラップを走り終えること無くレースを終えることとなった。

今シーズンは土曜日に第1戦の公式予選及び決勝、日曜日に第2戦の公式予選及び決勝と、1大会で2レースが開催される形式が増え、今回の鈴鹿大会も2レースの開催である。
チームは第1戦の決勝レースで破損した車両の修復に急ピッチで取りかかった。
修復箇所は予想以上に多く、作業は土曜遅くまでかかった。
翌9日(日)は朝から快晴。
午前10時15分から始まった公式予選Q1グループAに、三宅選手は無事出走することができた。
しかし、前日とは風向きが変わった上、前日のクラッシュによって大幅な修復作業を行ったため、操縦の感覚が変わり、走り出した三宅選手は前日と異なる感触にとまどいながらタイムアタックを行わざるを得なかった。
その結果、タイムは1分38秒634と、出走した11台中10番手となり、Q2進出は叶わず、スターティンググリッドは最終的に20番手と決まった。

気温15℃、路温は38℃というコンディションで第2戦の決勝レースがスタートした。
今シーズンもレース中のタイヤ交換義務力‘あるものの、規則が一部変更され、1大会2レースのフォーマットでは日曜日のレースに限りスタート直後からタイヤ交換が可能となった。
この規則変更を受けた各チームは、早めにタイヤ交換をするかタイヤ交換を遅らせるか、戦略が大きく分かれた。
三宅選手はスタート直後にタイヤ交換をしようと考えていた。
しかし、多くのチームが早めのタイヤ交換準備を始めたのを見たチームは、三宅選手と無線を通じて相談し、コースに戻った際に同じタイミングでピットアウトした選手と集団になって走ることでペースが上がらなくなる可能性を回避し、タイヤ交換を遅らせる方向へ戦略を転換した。
戦略は的中し、前方が開けた状態で周回を重ねることができ、20周目には5番手での走行となった。
ここで三宅選手はピットインを行い、事実上14番手でコースに復帰した。
前を走るのは1周目にタイヤ交換を終えた福住仁嶺選手で、新しいタイヤを装着した三宅選手のペースは良く、24周目のスプーンカーブ進入で福住選手のインに飛び込み、順位を入れ替えた。
その後は前を走る山下選手を追いかける展開となり、順調に追い上げを見せていたが、28周目にコース上でアクシデントが発生し、車両回収のためにセーフティーカー(SC)が導入されてそのままレースは31周を周回しフィニッシュを迎えた。
三宅選手の正式順位は22台中13位、レース中のベストラップは全体の7番手だった。

ドライバー:三宅淳詞

第1戦は、予選のタイムを上手くまとめられず、スターティンググリッドは沈んでしまいましたが、クルマのポテンシャルは確実にあり、後方の16番手からのスタートだった分、タイヤも温まっていたので、決勝では順位を上げられると思っていました。
スタートはまずまずで、他車との位置関係も良く、追い上げていける展開でした。
そこでNIPPOコーナーでアウト側から勝負を仕掛けたのですが、わずかに脱輪してしまい、バリアにぶつかってしまいました。
メカニックに余計な作業をさせることになってしまい本当に申し訳無く思っています。
第2戦に向け、クルマはメカニックが完璧に直してくれましたが、走った感触は大きく変わってしまい、第2戦の予選は本来のパフォーマンスが出しきれませんでした。
予選の後、走行時のデータを見て調整を行い、決勝ではまずまずのペースで走れるようになりましたが、ポイント獲得には届きませんでした。
今回は、第1戦でクラッシュしてしまったために流れが崩れてしまったと思います。
ただ、昨年までは、クルマに何か調整を施してもタイムが変わらなかったのですが、今年はセッティング変更に対して、良くも悪くもクルマが反応するので良い感触を得ています。
次の大会が開催されるモビリティリゾートもてぎは、ロングランでタイヤに厳しいコースですし、コースレイアウトも抜きにくいことで有名です。
そうなると予選の速さが大事になってくるので、まずは予選で良いタイムを一発出せるようにしていきたいと思います。
監督:塚越広大

新体制になって最初のレースで、開幕前テストでも上位にいたので期待していました。
ただ、やはり本番のレースとなると他チームのペースも上がって、簡単ではありませんでした。
私たちも開幕戦に向けてもっとペースを上げようと考え、クルマを仕上げて持ち込みましたが、それがあまり合致せず、第1戦の予選では上位へ行けませんでした。
決勝では三宅選手が攻めた結果、クラッシュしてしまいましたが、「攻めていける」と彼が感じられるクルマになったのであれば、良い方向だとも考えられます。
第2戦の順位は13位に終わりましたが、これまでと違って戦略に幅を持たせることができ、ライバルに対してどう動くかを選択しながらレースができました。
ペースも悪くなく自力でポジションを上げてフィニッシュできたので、悪くないレースウィークだったと思います。
トラックエンジニア:一瀬俊浩

開幕前テストではまずまずのタイムで走れましたが、トップを狙うには足りないと考え、これまでやったことのない新しいセットアップを持ち込みました。
しかし、それが目論みからは外れてしまい、外れた原因を特定するのに時間がかかってしまいました。
ある程度クルマのバランスは良くなりましたが、アンダーステアが強い状況になってしまってタイムが伸びなかったというのが第1戦の予選の失敗です。
予選の失敗により三宅選手が決勝で頑張って前に出ようとしてくれたのですが、勢い余って飛び出してしまいました。
その後クルマを修復しながらセッティングの改善にも取り組みましたが、新品の部品に変わった影響が思いの他大きく、クルマの操縦性が別物になってしまい第2戦の予選は良くありませんでした。
ただ、決勝に向けて予選の結果を基にクルマを調整した結果上手くいき、決勝のペースは良くなりました。
レースウィーク全体を考えると、そもそも持ち込んだセッティングの目論みが当たらなかったり、クラッシュしたりで、全部後手後手に回ってしまいました。
エンジニアとしては反省が多い週末になりました。







