開幕から2戦、クラス内のライバル不在という状況ながら、速さを磨き総合上位進出を目指してきたシンティアム アップル KTM。
ただ、実績あふれるクルマながら2戦ともにトラブルに泣かされてきた。
今回こそは好結果を残したいと臨んだ第3戦の舞台は、大分県日田市のオートポリス。
アップダウンが激しく、タイヤにも厳しいコースだ。
そんな一戦に向け、チームは7月25日(木)の午後から行われた特別スポーツ走行2回のうち、1回目のみを走行。
加藤寛規と吉本大樹がステアリングを握り、第2戦で泣かされたパワステのトラブルシュートを実施。
アッセンブリーでの交換となったが、異常がないことをしっかりと確かめた。
明けた7月26日(金)は、午前10時から行われたグループ1の専有走行に臨んだ。加藤が確認を行い、この日から合流した井田太陽に交代。
さらに走行中にサーキットに到着した高橋一穂にスイッチし周回を重ねた。
2回目の全クラス混走の専有走行は午後1時45分からの予定だったが、直前に強い雨が降ったため、まずは吉本が濡れた路面で走行。
ふたたび井田、高橋と交代し初日を終えた。
富士の予選までトライしていた車体のバランスも良好で、タイヤとのマッチングも良い。
渡邊信太郎エンジニアも満足の2日間となった。
順調に終えた2日間を経て、迎えた7月27日(土)の予選日。
午前のフリー走行では高橋と井田がドライブし予選に向けた調整を進めた後、午後1時15分から行われた公式予選に臨んだ。
まずAドライバー予選では、井田が1分54秒581を記録。
ST-X勢に続く総合5番手につける。
「タイヤカスがない状況だったので、コースの端まで使って走ることができました」と好アタックをみせた。
続くBドライバー予選の加藤も1分56秒086というタイムを記録。
こちらも総合5番手となった。
ただ、高橋がアタックしたCドライバー予選からやや車両に変調が出はじめた。 Dドライバー予選の吉本は、走行中無線で「シフトアップのときに振られる」という症状を訴えた。
第2戦富士のときも車両が振られる症状があったが、この時とも違う印象がある。 チームはさまざまな対処を検討。
最終的にタイヤ、もしくはホイールに原因があるとし、翌日の決勝前のウォームアップでその対策を確認していくことになった。
迎えた7月28日(日)の決勝日は、朝から晴天に恵まれ、夏空のもと午前11時から決勝レースがスタートした。
シンティアム アップル KTMは通常、井田がスタートドライバーを務めることが多いが、今回渡邊信太郎エンジニアは、スタートドライバーに加藤を据える戦略を練った。
今季からAドライバーがレースの25%を走らなければならないが、燃料タンクの容量から井田の必要な走行時間はダブルスティントになる。
これを序盤にこなすか、後半にこなすかだが、今回は後半の方がレースの流れが読みやすいということから、加藤をスタート、最後に井田という戦略を組んだ。
また、高橋を路面コンディションがきれいなうちに走らせるべく、第2スティントに据えることになった。
スタートから加藤は、ST-X車両の後方、ST-Z車両の前方でしっかりとラップを重ねていく。
前日不安視されたトラブルも、やはりタイヤかホイールに原因があったようで、レースではすっかり解消されていた。
不安がなくなったシンティアム アップル KTMが今回目指すは、ST-Z車両を上回りゴールすることだ。
スタートから1時間というところで、ST-Z車両の上位争いのなかでクラッシュがあり、レースはセーフティカーランとなるが、このセーフティカーランを終えてからピットイン。高橋に交代。
集団のなか着実にレースを進めていった。
狙いどおりコース上はタイヤカスがまだそれほど多くなく、高橋にとっても楽な状況でドライブすることができた。
70周を終えてから高橋はピットに戻り、今度は吉本にステアリングを託した。
この頃には1回ピットが少ないST-Z車両が先行する展開となっていたが、吉本はそのギャップを埋めようとプッシュする。
ただ、やはり1回分のピットの差を埋めるにはややラップが足りなかった。
悔しさはあるが、こればかりは仕方ない。
チームは残りの井田のスティントに必要なタイミングを見てピットイン。
最後は井田がダブルスティントをきっちりとこなしフィニッシュを迎えた。
開幕2戦でチームを悩ませたトラブルは今回はなく、チーム、ドライバーともノーミスで終えることになった。
今回はドライバー4人が堂々たる姿で表彰台に上り、クラス優勝を喜び第3戦を終えることになった。
「ライバル不在ではありますが、レースでは仮想のライバルを作ってタイヤが厳しくなってもタイムを落とさないように頑張ったので、自分なりに大変なスティントでした。
今季はいつも不安を抱えながら戦っていたので、今週はトラブルがなく戦えたのが大きかったです。
最終的にタイヤも上手く使えましたしね。
次戦はもてぎですが、クルマは問題ないと思いますけど初のワンデー開催らしいので、その点は不安ですね」
Hiroki KATO 加藤 寛規
「今季初めてちゃんとしたレースを戦うことができました。
トラブルもありましたが、原因も分かりレースに向けて対応してくれたので、4人のドライバー全員がしっかりと走り、チーム全体としてミスなく、すごく良いかたちのレースを戦えたと思っています。
今回、ST-Zクラスの前でゴールしたいと考えていましたが、それができなかったのが少し悔しいですね。
次もそれを目指して取り組めたらいいなと思っています」
Kazuho TAKAHASHI 高橋 一穂
「これまで2戦はトラブルがありましたが、今週はチームのみんなが頑張ってくれたおかげでノートラブルで走り切ることができたのが本当に良かった。
チームに感謝ですね。
このコースはタイヤカスが多く出るのですが、自分にとっては本当にダメなので、第2スティントでまだコースがきれいなうちに走ることができて、その点も感謝です。
まだドライビングも磨かなければいけないので、次のもてぎも頑張ります」
Hiroki YOSHIMOTO 吉本 大樹
「これまでのレースではタイヤに不安はありませんでしたが、今回のように路面温度が上がると厳しくなりましたね。
今週は基本的にトラブルもなく走れましたし、レースもしっかり走り切れたので良かったです。
今回、ST-Zクラスの前でゴールすることを目標にしており、自分のスティントで取り戻したいと思いましたが、実現できなかったのは悔しいです。
とはいえ、チームとしても良いレースになったと思います」